睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
ここ数年にわたりしばしば報道されるようになり、社会問題化している疾患として睡眠時無呼吸症候群があります。ここでは、この疾患について解説し、その治療法について解説したいと思います。
睡眠時無呼吸症候群とは
最近発見された疾患と思われがちですが、1956年にBurwellという医師がPickWick症候群の主症状の一つとして報告したのが始まりのようです。PickWick症候群としては
著明な肥満、日中傾眠、周期性呼吸(睡眠時無呼吸)が三主徴といわれています。その後、研究が進むにつれ、
呼吸する通路に閉塞性の障害があることにより起きるもの[閉塞型]
呼吸運動そのものが停止してしまう[中枢型]
中枢型と閉塞型が合併している[混合型]
の3タイプあることがわかっています。
ちなみにアメリカでは睡眠時無呼吸症候群に罹患している率は男性の2-4%、女性の0.5-2%と言われており、日本国内では全人口のうち0.5-2%に相当する約200万人が罹患しているといわれています。このうち、歯科医師も治療に関係する閉塞型の睡眠時無呼吸症候群は約180万人いると予測されています。
上に示したように原因が大きく二つに分かれますので、主にどちらが原因であるかにより大きく治療法が異なります。ご自分かまたは家族の方などが睡眠時無呼吸症候群に該当するのではと心配な方はまずご相談下さい。
専用の検査機器を有する医療機関に紹介し、その検査データを元に治療を受ける形になります。検査自体は健康保険の適用になるようです。
我々歯科医師が関与する睡眠時無呼吸症候群は、先に挙げた閉塞型(OSAS)のタイプになります。その原因となる因子についてまとめておきます。
形態的異常
| 肥満によるもの | 上気道への脂肪沈着 これが最も多いもの |
| 顎形態異常 | 小下顎症、下顎後退症、顎骨の破壊(リュウマチ) |
| 咽頭喉頭異常 | アデノイド、扁桃肥大 |
| 鼻疾患 | 鼻中隔彎曲症、慢性副鼻腔炎、鼻ポリープ |
| 睡眠体位 | 仰臥位による舌根沈下 |
機能的異常
| 上気道筋の活動低下 | アルコールによるものが多い 睡眠薬、鎮静剤でも起きることがある |
| 上気道の鬱血 | |
| 上気道粘膜の癒着性増加 | |
| 換気調整機構の異常 | |
| 性ホルモン | 女性の場合には女性ホルモンの不足が原因のこともある |
一般的には肥満の人の方がリスクが高く、お酒を飲んだ後の睡眠に危険性が高くなることが知られていますが、肥満でない方でも症状が出ることがあり、これは小顎症(顎の骨が小さい)方が多く見られます。
自覚症状
- 大きないびき
- 日中非常に眠たい
- 睡眠中に頻繁に寝返りをする
- 睡眠中よくトイレに起きる
- 早朝に頭が痛い
- 性格が怒りっぽくなったりいらいらするようになった
- よく眠れない気がする
- 睡眠中に息が詰まる感じがする、息切れがする
このような自覚症状が複数見られた場合は要注意です。早めに医師または歯科医師の診察を受けた方がよいでしょう。
診断
診断を確定するには、医科で終夜睡眠ポリグラフィー(Polysomnography:PSG)という検査を行います。専用の機器を使い、睡眠段階、睡眠深度、呼吸モニター、循環モニター、動脈血ガスなどを測定します。
これにより睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、その重症度により生活指導(肥満の解消、横を向いて寝るなど)、口の中に装着する装置を製作するか、鼻にマスクをかけ機械で持続的に空気を送り込む装置をつけるかなどを決定します。これは医科で行います。
装置
寝ているときに、舌の根元や顎の周りの筋肉が重力で気道を狭くしないように下の顎を少し前方に出した状態を維持させる装置が睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる口腔内装置です。
口腔内に装着する装置を使用する場合は、通常歯科に制作が依頼されます。歯科医院に来院されますと、顎の関節の診査(顎を少し前方に出した位置を確保できるかどうか)や歯周組織検査(歯牙に負担がかけられるかどうか)といった診査・検査を行い、口腔内装置の適用になることを確認してから製作をいたします。場合によっては、エックス線検査が必要になることもあります。
口腔内装置は上下の歯の型を取り、かみ合わせの記録を取ってから、製作いたします。仕上がった装置は、それぞれのお口に適合するように精密な調整を行ってから就寝時に使うようにお渡しいたします。装置になれるには少し時間が必要かもしれません。
装置に慣れてから、再度医科の方で装置の効果が現れているかどうかをPSGなどを用いて検査します。もし、効果が低ければ装置により顎の位置をもっと前方にずらすように調整することもあります。
この装置で効果が現れない場合は、鼻にマスクを装着して機械で持続的に空気を送り込む経鼻持続陽圧呼吸器という装置が用いられることが一般的なようです。